2007年度 首都圏青年ユニオン定期大会決議
2007年9月30日 於 東京労働会館5階会議室 <2007年度 活動総括> この1年間の首都圏青年ユニオンの活動はめざましいものがあった。「すき家」での1万人以上のアルバイト従業員に対する残業代未払いの是正や、2007年5月20日の全国青年雇用集会の3300人の参加での成功を勝ち取ってきた。 しかしながら、すさまじい貧困の拡大の現実に運動が立ち向かわざるを得なくなった1年でもあった。その中で、ユニオンは、貧困と労働基準法以下の労働条件とたたかいながら組織化を前進させてきた。このたたかいは始まったばかりであり、たたかいをさらに前進させることが求められている。 狭い意味での労働組合から、「貧困と労働基準法以下の労働条件の拡大とたたかう社会運動」にさらに発展することが求められている。 1.組織化の特徴 前回大会以降の組合加入者は101名であり、44名が脱退し、現時点での組合員数は321名である。1年間の加入者が100名を突破したことは重要である。脱退者の44名のうち8名は静岡青年ユニオンの首都圏青年ユニオンからの分離・独立にともなうものであるので、実質的な脱退は36名となる。なお、6ヶ月以上の長期にわたる組合費未納になっている約70名については、定期大会後に脱退手続きをとるので、組合費を納入している組合員の実勢は約250名である。組合員加入は、労働相談・交渉の件数の拡大にともなってすすんでいる。それとともに、ユニオンへの期待からの加入も徐々にではあるが増加している。羽田空港での請負会社での組織化の経験など、ユニオンに入ることによって未払い残業代を支払わせたことで信頼をかちとり加入者が増えていることなども重要である。また、労働相談から加入した組合員の多くが、みずからの問題を解決した後もユニオンにとどまっていることは積極的に評価できる。みなと分会にみられるように、分会を結成しての加入もすすんだ。 また、「すき家ユニオン」として企業別の組織化を全国的に展開したことも重要である。 2.交渉・争議の総括 昨年9月以降の交渉・争議は別紙のとおりである。解決した案件の内訳は、解雇12件、残業代未払い8件、社会保険未加入8件、雇用保険未加入5件、退職時のトラブル・いやがらせ6件である。解決手段の内訳は、団交で解決した案件22件、労働審判で解決した案件4件であった。 団交によって、ユニオンの自主交渉で多くの問題を解決に導いていることが重要である。2006年4月から始まった労働審判制度もユニオンでは積極的に活用して早期の問題解決を達成している。労働審判を使う場合も、団交と同様にすべてを組合員参加型にしてユニオン全体で支援するように進めた。団交を申し入れたときに団交を拒否してくるケースもまれにあるが、労働委員会、労働審判を活用して解決している。ほとんどのケースを組合員が納得できる水準での解決に導いてきている。 そのなかでも、「すき家」を経営するゼンショーとの交渉によって、最初に加入した組合員6名の解雇撤回だけでなく、全社アルバイト従業員(登録者数1万人以上)に対して未払い残業代の法律どおりの計算での支払いに是正させることができた。この成果は重要である。その後、ゼンショーは、仙台の「すき家」で働く組合員への勤務時間差別を始め、さらに団交拒否を続けているため、差別の解決と団交応諾を求めて東京都労働委員会への不当労働行為申し立てをおこなった。3人の若手弁護士による強力な「すき家」争議弁護団も結成された。仙台のすき家で働く組合員は、個人的事情から「すき家」を退職した者以外はユニオンを脱退することなく不屈にたたかっている。2007年9月には、ゼンショー本社の管轄である三田労働基準監督署に、労働基準法違反での申告もおこなった。3回にわたる渋谷での「牛丼『すき家』は残業代を法律どおり払え」大宣伝は、多くの市民の関心を集めた。その様子は、テレビ・雑誌でも報道され、一定の影響力をもった。宣伝には、ユニオンの組合員のみならず、首都圏青年ユニオンを支える会のみなさん、民青同盟のみなさん、NPO自立生活サポートセンターもやい事務局長の湯浅誠氏の参加を得ることもでき、運動的広がりももつことができた。3回目の宣伝行動では、街宣車を渋谷ハチ公前に出してアピールもおこなった。 3.貧困の拡大とのたたかい 派遣・請負などの不安定な労働形態が広がる下で、生活そのものが成り立たなくなっている相談が増えている。生活が成り立たなくなった人に対しては、生活保護をすすめることになるが、それをサポートするNPO自立生活サポートセンターもやいとの協力で生活保護申請にむけて相談を数件もち、1件についてはユニオン役員もNPO自立生活サポートセンターもやい事務局長の湯浅誠氏とともに申請に同行した。また、生活苦のなかで、クレジット・サラ金などの多重債務に陥っているケースの相談も多く入ってきた。これも、もやいと協力しながら弁護士を紹介して債務整理をおこなった。多重債務に陥っている人の場合、弱みに付け込んで高い着手金を取る悪質な弁護士・司法書士と契約してしまっているケースも少なくなかった。悪質な弁護士・司法書士との契約を解除して、きちんとした債務整理への紹介もおこなった。 生活困窮に陥ってしまっている人たちへの対処として、労使交渉以外の最低限の知識・情報をユニオンとしても蓄積できたことは意味がある。また、何よりも、実践的な蓄積のあるNPOもやいとの協力関係を築けたことは、今後の運動展開としても意味があった。 以上のような具体的な個別対処とともに、貧困そのものの根絶をめざす運動にも参加したことは、この1年の特徴であった。非正規を組織する労働組合、多重債務問題に取り組む団体、シングルマザーの団体、身体障害者団体、精神障害者支援団体、生活保護問題に取り組む団体などが横断的に貧困問題の解決のために結集した「反貧困ネットワーク」の運動に参加した。「反貧困ネットワーク」そのものは個人資格での参加であるが、ユニオン書記長が参加することによって、「反貧困ネットワーク」の2回の集会へのユニオン組合員からの参加も多数獲得することができた。労働組合が貧困問題に取り組む意義についてのアピールができたことは意味があった。 4.組合員参加型の活動 ユニオンの活動のあらゆる場面で参加型を追求した。団交、労働審判、裁判、労基署申告など、何から何まで参加型にした。執行委員会への参加も組合員なら誰でも自由に参加して意見が言えるように運営した。参加型の活動によって、ユニオン組合員の創意を結集しながら活動できたことは意味があった。 5.地域分会の組織化 6.青年雇用問題の社会的アピール @全国青年雇用大集会の成功 2007年5月20日に全労連青年部、民青同盟、全学連などと実行委員会を組織して開催した「まともに生活できる仕事を!人間らしく働きたい!全国青年大集会」は、3300名の参加で大成功した。この集会の存在を知って一人で参加した日雇い派遣で働いていた女性は、「みんなの発言を聞いて涙ボロボロだった」という。彼女は、その日、集会会場でユニオンに加入した。全国各地で昨年から地域ごとの集会・企画を積み重ねながらの集会の成功だった。この経験が全国各地での青年ユニオン結成のうごきにつながっていることも重要である。 Aパネルディスカッション「現代の貧困とたたかう若者の労働運動」 「首都圏青年ユニオンを支える会」総会の記念企画として、パネルディスカッション「現代の貧困とたたかう若者の労働運動」を開催した。パネリストとして、後藤道夫(都留文科大学教授・支える会共同代表)、風間直樹(週刊「東洋経済」記者)のお二人をお招きし、河添誠(首都圏青年ユニオン書記長)とともにディスカッションをおこなった。予想を超えて100名以上の参加があり、この分野の問題への関心の高さがうかがわれた。メディア関係者も多く参加しており成功をおさめた。 Bネットカフェ難民調査 5・20全国青年雇用大集会実行委員会の企画として、ネットカフェ難民の全国調査をおこなった。ユニオンも東京での調査に参加した。調査結果について厚労省記者クラブでの記者会見をおこない、テレビ・新聞・雑誌に爆発的に取り上げられた。その後、厚労省も独自の調査をおこない、行政の対応も不十分ながら始まったことは集会実行委員会の運動の成果でもある。住居も失ってしまうような貧困の存在を社会的に訴えることはできたことは重要な成果だった。 Cマスメディア 新聞・テレビ・雑誌に首都圏青年ユニオンは登場し続けた1年だった。積極的に厚労省記者クラブでの記者会見をおこない、メディア対応はていねいにおこなった。集会や宣伝行動などの事前情報もその都度、メディアに送った。その結果、ユニオンの活動がメディアに多く登場することとなった。マスメディアに多数取り上げられたことはアピール力もあり重要だった。 D講演活動 全国各地に講演に呼ばれた。労働組合だけでなく、市民団体、人権団体、高校教師の研修、高校の総合学習などに呼ばれた。全国各地での青年ユニオン結成大会や結成準備会にも呼ばれた。これらの講演には積極的に応じた。 E執筆活動 新聞・雑誌等への執筆依頼も多かった。これにも積極的に応じている。 F夏まつり ユニオン主催の「夏まつり」を開催した。気軽に参加してもらってユニオンを知ってもらう企画として開催した。それなりに成功したが、企画としてはやや中途半端ともいえた。より「おまつり」的な要素をつよめるべきかどうかは要検討である。 GユニオンYES!キャンペーンへの参加 労働運動そのものをキャンペーンしようという「ユニオンYES!キャンペーン」に積極的に参加した。団交の様子もビデオ作品にまとめて集会で上映して好評を得た。 7.機関運営 @執行委員会 従来どおり参加型を徹底しておこなった。今年は毎回、200円程度での食事を必ず用意する習慣ができたことは、組合員がなごやかに会議に参加できるという効果もあり、結果として大成功だった。毎回の会議が十数名の参加で活気のある会議となった。会議の内容はメーリングリストで議事録を流して、ユニオン全体で共有できるようにしている。執行委員のメンバーの参加が必ずしもよくなかったのは問題点としてあげられる。 Aニュースレター編集委員会 ニュースレターの編集作業はメールでのやり取りで、かなり効率化されている。編集に関する会議は特段もたれていないが、執行委員会での意見が反映されるようになっている。 8.学習活動 団交などを参加型にすることによって、実地の学習効果は小さくないとは考えられるが、学習会の開催は十分ではなかった。学習は組合員定着のうえでも重要だと思われるので、抜本的に重視する必要がある。 9.財政活動 組合費未納者の一掃キャンペーンをおこない、かなりの成果をあげた。組合費未納者に対して電話・メール等で組合費納入をお願いするとともに、組合費納入についてニュースレターで毎号のキャンペーンページを作った。 首都圏青年ユニオンを支える会の会員をユニオン組合員も拡大するということについては十分にできなかった。ユニオンの財政を考えたときに、決定的に重要なのは、専従者の給与を支える「支える会」会員の拡大であるので、ユニオン独自に追及できなかったのは弱点だった。今後の課題である。 10.広報活動 カラー印刷でリーフレットを作成して配布した。ユニオンのことが簡便にわかる宣伝物がようやくできたのはよかった。ホームページは、更新回数を増やして新しい情報が常に載るようにしたこともよかった。ホームページを見ての問い合わせも増えている。また、新しい試みとして、団交の様子をビデオ撮影してビデオ作品にまとめた。水準の高いもので好評である。ユニオンチューブなどの動画投稿サイトに掲載している。 11.平和と民主主義の活動 憲法改悪反対・憲法改悪手続法制定阻止、教育基本法改悪反対、WORLD PEACE NOWの集会に積極的に参加した。ビキニデー、原水禁大会にも各々1名の代表派遣をおこなった。原水禁大会参加者による感想報告会もおこなった。これらの問題についての独自の学習が必要だったができなかった。今後の課題である。 12.青年雇用問題をめぐるネットワーク @就職連絡会 1ヶ月に1回の会議を定期的におこなって意見交流をおこなっている。2006年7月には、フランスCGT青年代表のジョフレ・セザリオン氏を招いて、フランスの若者の労働法規制緩和に反対する運動についてうかがう集会を開催した。厚労省などへの要請行動もおこない、ユニオン組合員も現場からの声を直接訴えた。 A青年雇用懇談会 全労連青年部、民青同盟、全学連と定期的に青年雇用問題に関わる運動の意見交換をおこなっている。この懇談会が青年雇用集会を進める上での重要なネットワークになっている。定期的に意見交換をすることで連携をとりやすくなっている。 13.首都圏青年ユニオンを支える会 首都圏青年ユニオンを支える会が第1期を終え、第2期に入った。現在のユニオンの独自財政では専従者を一人も配置できないことは明らかなので、「支える会」との協力は引き続き重要である。昨年は、支える会との共催でパネルディスカッション「現代の貧困とたたかう若者の労働運動」を開いた。支える会会員とユニオン組合員との交流会も好評だった。 <2008年度 活動方針> 1.貧困とたたかうネットワークの強化を 反貧困ネットワークが超党派で発足した。この運動の強化のために引き続き奮闘する必要がある。貧困問題の解決のためには、広く運動のネットワークを広げる必要があるからである。 ユニオンへの相談者にも貧困と関わるさまざまな困難を抱えた人が増えている。そうした相談に具体的に対応できるネットワークをつよめる必要がある。生活保護申請・多重債務問題などの問題にもNPO法人自立生活サポートセンターもやいなどと連携して解決していく。 また、貧困な中で正確な情報に触れることなく困難を深めてしまっている人に対して、生活保護やサラ金整理の正確な情報を伝えるネットワークをつくる。NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長の湯浅誠氏らとともに準備している「反貧困助け合いネットワーク」(仮称)を2008年春に発足させる。助け合い互助金制度と無利子の貸付制度を内容としたネットワークを構想中である。このネットワークを「もやい」やユニオンの外に広く広げることによって、正確な情報へ触れることが可能となる。このネットワー クを広げるキャンペーンを11月から開始する。 ユニオンYES!キャンペーンにも引き続き参加して、「希望は、ユニオン。」を合言葉に労働運動の魅力を訴えていく。 2.組合員の拡大 来年の大会までに400名を目標として活動を広げる。5年後の大会時に1000名の組合員を目標とする。 3.地域分会の結成 地域分会の結成を各地で計画的に進める。地域ごとに首都圏青年ユニオン主催のユニオンを知ってもらう企画・講演会を組織して、地域ごとの運動ネットワークをつくりながら地域分会の結成をめざす。当面、東京23区すべてでの地域分会の結成をめざす。 4.参加型の活動のさらなる前進を ユニオンにとってもっとも特徴的な活動スタイルである「参加型」をさらに徹底させる。団交に参加したことのない組合員がいなくなることを目標にして、積極的に団交などへの参加を呼びかける。 また、組合員が寄り合う場としてのゆるやかな居場所・企画をつくることも位置づけて、居場所のない若者が居心地のよい場をつくっていく。 5.学習の強化 新入組合員むけの学習会を1ヶ月に1回開催する。また、より突っ込んだ労働運動の理論学習・情勢学習については、「首都圏青年ユニオン連続講座」を開催する。ユニオン組合員だけでなく広く参加を呼びかけて労働問題に関わる学習運動としても展開する。講師陣は、「支える会」会員になってくださっている研究者・弁護士・労働運動活動家などから一流の布陣を準備する。 6.財政の強化 支える会の会員拡大がユニオンの専従者の賃金を確保するために不可欠である。当面、1年間で1000名を目標としてユニオンとしても独自に会員拡大を位置づける。なお、1000名で年会費6000円を掛けると600万円となる。二人の専従者を支えるために最低限必要な会員数であるので必ず達成する必要がある。 組合費納入のよびかけを続けて納入率を上げる。組合費納入キャンペーンは続ける。 7.広報活動の強化 ユニオンを知ってもらうことが、まずは必要である。勉強会型の企画とおまつり型の企画とを開催していく。 団交のビデオを初めて制作した。水準の高いビデオ作品で好評である。ユニオンチューブなどに公開している。ホームページもさらに改良して見やすくする必要がある。 8.ニュースレター マンガ・連載記事も好評であるので、さらに新しい企画を載せていく。「支える会」との協力ページも引き続きつくっていく。書評・CD評などのページもつくる。 9.機関運営 参加型をさらに強める。執行委員会への執行委員の参加をつよめる。 10.青年雇用問題解決にむけたネットワークをさらに強める。 @就職連絡会 就職連絡会の諸行動に引き続き積極的に参加する。11月17日(土)に湯浅誠氏を招いてのシンポジウムの成功のために活動する。 A青年雇用懇談会 青年雇用関連の運動ネットワークとして引き続き参加する。 B全国の青年ユニオンのネットワーク 全国に結成されている青年ユニオンのネットワークをつよめる。当面、メーリングリストを作ったが、交流会なども計画する。 11.平和と民主主義 憲法問題、共謀罪問題での学習をつよめて運動を広げる。ビキニデー、原水禁大会への複数の代表派遣をめざす。 12.国際交流 新自由主義的グローバリゼーションの下での労働環境の悪化をやめさせるためにも国際的な連帯運動は重要である。さまざまな運動に積極的に参加していく。 13.文化・レクリエーション活動 映画・音楽の企画や、バーベキューなど、自由に提案してもらって具体化する。組合員からメーリングリストに自由に流してもらって交流も深める。 |