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 ベローチェ「4年雇い止め」事件

2013年7月23日  カフェ・ベローチェを経営する株式会社シャノアールを提訴し、2016年2月16日に東京高裁で和解が成立しました。



1、2016年2月16日、東京高等裁判所民事第5部において、「カフェ・ベローチェ」を運営する株式会社シャノアールが、同千葉店で足かけ9年にわたって、アルバイトとして勤務してきた女性労働者(控訴人)を、雇止めした事件において、和解が成立した。
2、裁判上の和解の内容に従い、和解の内容を下記のとおり発表する。

(1)控訴人(首都圏青年ユニオン組合員)と被控訴人(株式会社シャノアール)は、東京高等裁判所平成27年(ネ)第4699号地位確認等請求控訴事件について、平成28年2月16日、裁判所の和解勧告に基づき和解した。

(2)本件和解の骨子は以下のとおりである。
@控訴人と被控訴人は、本件紛争が円満に解決したことを相互に確認し、以後相互に相手方を非難する言動及び相手側の社会的信用を損なう行動を行わないことを確認する。

A控訴人と被控訴人は、控訴人と被控訴人との間の労働契約は平成25年6月15日の満了を持って終了していることを相互に確認する。

B被控訴人は、控訴人に対して、解決金を支払う。

3、今般の和解は、控訴人が理不尽に職を奪われたのち、地裁判決で不利な立場に立たされた控訴人と組合にとって、高裁の裁判官が、原審の判断に疑問を呈したうえで提案した内容を元に進められた和解協議の末得られたものである。内容的にも、解決金が得られたこと等から、組合は、勝利和解と評価している。

自由法曹団東京支部 ベローチェ事件和解成立のご報告(三浦佑哉) PDF版

 

 

1 はじめに
本件は、コーヒーチェーン大手「カフェ・ベローチェ」千葉店に勤務していた原告(当時29歳女性)が不当な雇止めを受けたことから、運営会社である株式会社シャノアールに対して、雇止め無効による地位確認、未払賃金、精神的慰謝料の支払を求めて、2013年7月23日、東京地裁に提訴した事案である。

 

2 訴訟における原告の主張
(1)労働契約法19条1号又は2号に該当する
雇止めされるまで、3ヶ月間の労働契約を19回更新し、4年11ヶ月もの間働いてきたこと、店舗で唯一の正社員である店長が不在の場合には、「時間帯責任者」として店長に代わって店舗を管理しており、その業務は店舗の根幹かつ恒常的であること、契約更新手続きが形骸化していたこと、組合と会社間で原告については上限なく契約更新することの合意がなされたこと等から、労契法19条1号又は2号に該当する。

 

(2)改正労働契約法の悪用は明らか
店長が会社からの通達に基づき原告に雇止め予告をした2012年3月23日は、「無期転換ルール」が盛り込まれた労契法の改正案が国会に提出された日であった。
会社側は、当初店長や部長が、法律の改正に伴う措置である旨述べて以降、一貫して、4年の上限導入と労契法改正との関係を否定している。しかし、上限を導入したタイミング、店長や部長の発言、会社が当該措置の合理的な理由を説明できていないこと等からすれば、会社の真の理由が「無期転換ルール」の適用を回避するためであることは明白である。そして、かかる理由による上限導入及びそれに基づく雇止めが、「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る」という労契法18条の趣旨を没却し、無効と解されるべきことは当然である。

 

(3)「鮮度が落ちる」発言による人格権侵害
会社は、団体交渉を行うごとに上限導入の理由を変遷させており、それらが苦し紛れの後付け理 由であることは明らかである。

もっとも、2(3)で触れた「鮮度が落ちる」という趣旨の発言は、シャノアールの「本音」としか考えようがない。
原告は、記者会見で、「大好きなお店だから働き続けてきました。なのに、やめさせる理由として『鮮度』という言葉を使って、魚や野菜のようにモノ扱いされ、人としての価値まで奪われました・・・。」と涙ながらに話した。また、「ただ4年で人を使い捨てにするだけではなく、女性をモノ扱いし、年齢を重ねた女は、必要ないと言われたことが、私に裁判を決意させる決め手となりました。」とも語っている。

 

3 極めて不当な地裁判決
東京地裁19部(吉田光寿裁判官)は、原告の雇用期間・契約更新回数、業務内容の恒常性については原告の主張を認めたものの、正社員との同一性を認めず、かつ、契約更新手続の厳格さ、雇用継続を期待させる言動について原告が主張するところを認めず、労働契約法第19条1号及び2号の適用を否定し、本件雇止めは有効であるとした。また、被告の交渉担当者による「鮮度」発言についても、相当性を欠くきらいはあるとはするものの、交渉の際の一部の言動をとらえて不法行為の成否を判断すべきではない、人格を傷つける意図があったことを認めるに足りる証拠がないなどとして、違法な発言とまでは評価できないと不法行為責任を否定した。
本判決が、労働契約法第19条1号・2号の適用を否定した理由に、原告の少ない勤務日数を挙げていることからして(一審では全く争点になっていなかったにもかかわらずである)、吉田光寿裁判官が、学生アルバイト等のアルバイト従業員の雇用を法的に保護する必要性は乏しいとの価値観を大前提に、本件判決をしたことは明らかである。形式的には労働契約法第19条1号・2号の要件の検討をした形を整えつつも、そのような独自の価値観に立って、自らが考える結論に適合的な証拠のみを引用し、それと抵触する事実と証拠については一切無視して、同条号の適用を否定したのである。
また、被告の交渉担当者による「鮮度」発言や雇用継続の合意の反故につき不法行為責任を否定した点についても、文脈や経緯はどうであれ、原告の人格や存在そのものを侮蔑するものであり、法的に違法とまでは評価できないとの判断は、著しく公平さを欠く判断と言わざるを得ない。
本判決は、被告の組織的かつ脱法的な雇止めを容認し、原告の権利を踏みにじるものであり、極めて不当な判決であった。

 

4 高裁での勝利的和解の成立
原告は控訴し、たたかいの場は控訴審に移った。2回の口頭弁論期日を経て結審なされたものの、その後の和解協議の場で高裁の裁判官から、「原審が労契法19条2号該当性を否定したことには問題があると考えている」旨の発言が飛び出した。そして、高裁の裁判官から和解の提案がなされ、その提案を元にした和解が2016年2月16日に成立した。
その和解の内容は、口外禁止条項との関係で、支援者や支援団体への口頭での報告を除き、@本件紛争が円満に解決したことを相互に確認し、以後相互に相手方を非難する言動及び相手側の社会的信用を損なう行動を行わないことを確認する、A労働契約は平成25年6月15日の満了を持って終了していることを相互に確認する、B被控訴人は、控訴人に対して、解決金を支払う、という限りでしか公表できないため、ご了承いただきたい。

もっとも、会社の女性に対する一定の解決金の支払いは、雇止め及び「鮮度発言」について会社が責任を認めたも同然であり、また、女性も「尊厳が回復されたと感じている。勝利に近い和解だった。」と語っており、この和解は勝利的和解と十分評価できるものである。

昨今の雇用環境の悪化、格差と貧困の拡大に伴い、学生にとってのアルバイトは生活と学業を維持するために不可欠なものであり、雇用継続を望む労働者を保護すべき必要性が大きいことはフルタイム労働者と同様である。今後、残念ながらこのような紛争がますます増えてくるものと思われる。本件の解決が今後のそのような紛争に生かされることを望むとともに、非正規労働者、アルバイト労働者の権利と尊厳を守るため、これからも全力で頑張っていきたい。
実働弁護団は、東京法律の笹山会員、あかしあの大久保会員、旬報の佐々木会員、東京東部の西田会員、私です。

朝日新聞 2016年2月17日

カフェ・ベローチェ雇い止め撤回訴訟、解決金で和解

コーヒーチェーン「カフェ・ベローチェ」でアルバイトをしていた女性(31)が契約更新を不当に打ち切られたとして雇い止めの撤回などを運営会社のシャノアール(本社・東京都豊島区)に求めた訴訟が16日、東京高裁(永野厚郎裁判長)で和解した。女性は退職に合意し、シャノアールは女性に解決金を支払う。

女性は2003年から約3年半、08年から5年弱、それぞれ3カ月契約を更新して働いていたが、13年6月に雇い止めにあった。女性は13年7月、地位確認と損害賠償を求めて提訴し、一審・東京地裁は昨年7月、女性の請求をいずれも棄却し、女性が控訴していた。

 

毎日新聞 2016年2月17日
雇い止め訴訟:「シャノアールが女性に解決金」で和解

東京高裁 「首都圏青年ユニオン」が明らかに

喫茶店チェーンの「カフェ・ベローチェ」を雇い止めになった千葉市在住のアルバイトの女性(31)が、運営会社の「シャノアール」(本社・東京都豊島区)に対し、雇い止めの撤回と損害賠償を求めていた裁判が16日、東京高裁で和解した。シャノアールが女性に解決金を支払う内容になっている。女性が加入する労働組合「首都圏青年ユニオン」が明らかにした。

女性は2003年以降、千葉市内の店舗で3カ月更新で働いていたが、13年6月に雇い止め通告された。会社側との団体交渉で「従業員が入れ替わらないと新鮮度が落ちる」などと言われたことから、13年に損害賠償と解雇無効を求めて東京地裁に提訴した。1審は女性側の訴えを退ける判決を出していた。

和解の詳しい内容や金額は明らかにされていない。女性側は「奪われた尊厳を取り戻すことができた」と話している。シ社は「(双方が合意した)公表分のとおり」と話した。【東海林智】

 

共同通信 2016年2月17日

ベローチェ雇い止め訴訟が和解 元バイト女性に解決金

「カフェ・ベローチェ千葉店」でアルバイトとして長期間働いていた30代の女性が、雇い止めされたのは不当だとして、運営会社シャノアール(東京)に雇用継続などを求めた訴訟は16日、東京高裁(永野厚郎裁判長)で和解が成立した。女性側によると、会社が解決金を支払う。

女性は2003年から勤務。一時離職した期間を除き、3カ月ごとに契約更新を繰り返していたが、会社は12年3月、「更新回数に上限を設ける」と通知し、連続勤務が4年11カ月となった13年6月、雇い止めとした。


弁護士ドットコム 2016年2月16日

「鮮度が落ちるから入れ替え」ベローチェ雇い止め訴訟が和解…元バイト女性に解決金
「鮮度が落ちるから入れ替え」ベローチェ雇い止め訴訟が和解…元バイト女性に解決金

喫茶店チェーン「カフェ・ベローチェ」千葉店で長期間、アルバイトとして働いていた30代女性が、雇い止めされたのは不当だとして、運営会社「シャノアール」(東京都)に雇い止め撤回と慰謝料などを求めていた訴訟は2月16日、東京高裁で和解が成立した。

和解成立後の16日午後、東京・霞ヶ関の厚生労働省記者クラブで、元アルバイトの女性と代理人弁護士らによる記者会見が開かれた。代理人弁護士らは、和解内容について、女性が2013年6月付けで合意退職したことを相互に確認する一方、会社が女性に解決金を支払うものと説明した。解決金の金額は明らかにしなかった。

●「尊厳が回復されないまま諦めるのはいやだった」
女性は2003年から勤務。一時離職した後、2008年7月からふたたび千葉店でアルバイトとして勤務していた。3ヶ月ごとの更新を繰り返していたところ、2012年3月、運営会社から突然、契約更新に上限を設けるという通達を受けた。女性は労働組合・首都圏青年ユニオンに加入し「働き続けたい」と主張を続けたが、連続勤務が4年11カ月となった2013年6月、雇い止めになった。

女性は2013年7月、雇い止めの撤回を求めて提訴。雇い止めになる前、運営会社と組合の交渉の場で、人事部長に「従業員は定期的に入れ替わって若返ったほうがいい」、「うちの会社ではこれを『鮮度』と呼んでいる」などと言われ、人格を傷つけられたとして、200万円の慰謝料もあわせて請求した。

しかし、一審の東京地裁は2015年7月、雇い止めは有効であるなどとして、女性の請求をいずれも退け、女性が控訴していた。

この日の会見で、女性の代理人の三浦佑哉弁護士は、「弁護団としては、解決金を支払うということは当然、会社側が雇い止めや鮮度発言への責任を認めたのだと解釈している。勝利和解と言っていい内容ではないかと考えている」と述べた。

また、女性は記者会見で次のようにコメントした。「『鮮度発言』をした会社に、裁判所がなぜ『おかしい』と言ってくれないのか疑問に思って控訴した。私の尊厳が回復されないまま諦めるのはいやだったので、楽ではなかったが頑張れた。私としては勝利に近い和解だったと思っている」。

運営会社「シャノアール」は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「円満に和解させていただいた。和解内容については双方とも公言しないことになっているので、コメントは差し控えたい」と述べた。

 

しんぶん赤旗 2016年2月17日付

尊厳回復の和解/カフェ・ベローチェ雇い止め事件/女性原告「誇らしく思う」

シャノアールの運営する喫茶店チェーン「カフェ・ベローチェ」が、アルバイト店員を上限4年で雇い止めにする制度を導入し、首都圏青年ユニオンに加入した女性(31)に対して「鮮度が落ちる」と発言して雇い止めを強行した事件は16日、東京高裁で和解が成立しました。

青年ユニオン組合員

昨年7月31日の東京地裁判決(吉田光寿裁判官)は女性側を全面敗訴にしましたが、会社側が和解に応じたことで、事実上、判決内容が否定されました。会社は解決金を支払い、女性は退職します。

女性はカフェ・ベローチェ千葉店で、雇い止めにされた2013年6月までに通算8年半、3カ月契約を更新。女性と青年ユニオンは、4年雇い止めは有期雇用労働者が5年働くと無期雇用への転換を申し込むことができる労働契約法を脱法する不当な制度であり、「従業員が入れ替わって若返らないと、『鮮度』が落ちる」とする発言は女性蔑視だと訴えました。

東京地裁判決は、雇い止めを容認し、「鮮度」発言についても「人格を傷つける意図があったと認められない」などと認定。青年ユニオンは会社前宣伝や署名で世論に訴えました。会社は昨年9月、「鮮度」発言について「今後の使用には適さない言葉」だとする見解を発表しました。

和解後の記者会見で、原告の女性は「尊厳を取り戻すためにたたかいました。おかしいことは許されないという結果になって、誇らしく思います」と話しました。原告代理人の佐々木亮弁護士は「労働組合あってこその成果だった」と指摘しました。

カフェ・ベローチェ4年雇い止め事件

 

 

東京高裁第5回目期日
日時:2016年2月16日(火)午前10時〜
法廷:東京高裁16階第5民事部(地裁と同じ建物です)
終了後、場所を変えて報告集会を行います。

 

東京高裁第4回目期日
日時:2016年1月27日(水)午後4時〜
法廷:東京高裁16階第5民事部(地裁と同じ建物です)
終了後、場所を変えて報告集会を行います。

 

東京高裁第3回目期日
日時:2016年1月12日(月)午前10時〜
法廷:東京高裁16階第5民事部(地裁と同じ建物です)
終了後、場所を変えて報告集会を行います。


東京高裁第2回目期日
日時:12月16日(水)午後2時30分〜
法廷:東京高裁511号法廷(地裁と同じ建物です)
終了後、場所を変えて報告集会を行います。

 

東京高裁第1回目期日
日時:11月9日(月)午後2時30〜

法廷:東京高裁511号法廷(地裁と同じ建物です)

終了後、場所を変えて報告集会を行います。

「カフェ・ベローチェ雇止め事件」不当判決に対する声明

声明 PDF

2015年7月31日

首都圏青年ユニオン
同 顧問弁護団

1 本日、東京地方裁判所民事第19部(吉田光寿裁判官)は、「カフェ・ベローチェ」を運営する株式会社シャノアールが、同千葉店で4年11ヶ月もの間アルバイトとして勤務してきた女性労働者(原告)を雇止めした事件において、同社に対する地位確認請求、慰謝料請求をいずれも否定する極めて不当な判決を言い渡した。

 

2 本件の原告は、長年貢献してきた被告から、モノのように扱われ簡単に辞めさせられたこと、年齢を重ねた女性を鮮度が落ちたと評され、人として尊厳を奪われたことに深く傷つき、本訴訟を提起した。
本訴訟において、我々は、@原告が「時間帯責任者」としてアルバイト従業員の中でも店舗の中心的な役割を担ってきたこと、店舗に1名しかいない正社員の店長と同様の業務を行ってきたこと、契約更新の手続が形骸化していたこと等から、労働契約法第19条1号又は2号が適用される、A本件雇止めは、労働契約法第18条に定められた「無期転換ルール」を回避するための脱法的雇止めであって違法である、B本件雇止めに先立ち、会社の交渉担当者は、「従業員は定期的に入れ替わって若返った方がいい」「うちの会社ではこれを『鮮度』と呼んでいる」との趣旨の発言を行い、原告に多大な精神的苦痛を与えた、C被告の交渉担当者は、首都圏青年ユニオンとの間で、原告ら組合員については雇用継続させる旨の合意をしたにもかかわらず、これを一方的に破棄し、原告に多大な精神的苦痛を与えたと主張した。

 

3 原告の雇用期間が4年11ヶ月、契約更新回数が19回(一旦退職する前も含めると、雇用期間は約8年6ヶ月、契約更新回数は33回)に及ぶことに争いはない。
そして、本訴訟を通じて、原告は「時間帯責任者」として、店舗の中心的業務である接客販売業務を店長と全く変わらない形で行い、形式的には店長が行うこととされている管理業務も一定範囲で権限を委ねられてきたこと、契約更新に際して面接などはほとんど行われておらず、更新手続は形骸化していたことなどが明らかとなった。また、被告の交渉担当者が、交渉過程において、原告らを指して「鮮度」という言葉を用いたこと、労働組合との協議の席で原告らにつき雇用を継続することを言明したにも関わらずこれを反故にしたことも明らかとなった。
したがって、我々は、裁判所が原告の地位確認請求及び慰謝料請求をいずれも認容する判決を言い渡すことを確信していた。

 

4 ところが、本判決は、原告の雇用期間・契約更新回数、業務内容の恒常性については原告の主張を認めたものの、正社員との同一性を認めず、かつ、契約更新手続の厳格さ、雇用継続を期待させる言動について原告が主張するところを認めず、労働契約法第19条1号・2号の適用を否定し、本件雇止めは有効であるとした。また、被告の交渉担当者による「鮮度」発言についても、相当性を欠くきらいはあるとはするものの、交渉の際の一部の言動をとらえて不法行為の成否を判断すべきではない、人格を傷つける意図があったことを認めるに足りる証拠がないなどとして、違法な発言とまでは評価できないと不法行為責任を否定した。


しかし、原判決の上記認定は、裁判官の事実認定として多数の誤りを含むものである。一例をあげれば、事実認定では、小和田部長は期間を定めた雇用の延長を考えていた旨を述べるが、小和田部長が、無期限に契約更新を認める旨を組合に言明して、組合がその内容の合意書案まで作成して被告に送付した事実、被告が上記言明を反故にしたため組合との交渉において小和田部長が謝罪をしている事実は、音声録音や合意書案等の客観的証拠や、小和田部長自身の証言から明らかである。


また、本判決は、裁判官の思い込みによって認定されている面がある。一例をあげれば、契約更新の際の手続きの厳格さについて、本判決は、店長がアルバイトと契約更新に関して面談をしていたか否かについて、「アルバイトの能力・技量は、店舗の業績に直結する重大事項であるから指導のための面談に必要な時間を費やすことは当然行われてしかるべき」などと述べて、面談など行われなかったとする原告の主張を排斥して認定している。


さらに、本判決は、原告の勤務日数の多寡やそれが労働契約の本旨にかなった就業であるか否かを述べて雇い止めに合理性を肯定しているが、この点は本訴訟において全く争点になっていなかったのであり、原告にとって「不意打ち」以外のなにものでもない。
このように、本判決は、形式的には労働契約法第19条1号・2号の要件の検討をした形を整えているが、思い込みなどに基づき誤った認定をしたものになっている。これは、就労日数の少ないアルバイトの雇用は保障されなくとも構わないとの独自の価値観に立って、自らが考える結論に適合的な証拠のみを引用し、それと抵触する事実と証拠については一切無視して、同条号の適用を否定した判断である。本判決は、吉田光寿裁判官独自の法解釈によるもので、法的安定性を著しく害するものである。


被告の交渉担当者による「鮮度」発言や雇用継続の合意の反故につき不法行為責任を否定した点についても、文脈や経緯はどうであれ、原告の人格や存在そのものを侮蔑するものであり、法的に違法とまでは評価できないとの判断は、著しく公平さを欠く判断と言わざるを得ない。
本判決は、被告の組織的かつ脱法的な雇止めを容認し、原告の権利を踏みにじるものであり、極めて不当な判決である。

 

5 本判決が、労働契約法第19条1号・2号の適用を否定した理由に原告の過少な勤務日数を挙げていることからして、吉田光寿裁判官が、学生アルバイト等のアルバイト従業員の雇用を法的に保護する必要性は乏しいとの判断を前提に、本件判決をしたことは明らかである。
しかし、昨今の雇用環境の悪化や急激な貧困化に伴い、学生にとってのアルバイトは、生活と学業を維持するための不可欠なものとなっていることを無視してはならない。例え勤務日数が少なくとも、生活の糧である当該仕事を継続することに対する期待は、フルタイムの非正規労働者と何ら異なることはないのである。


本判決は、かかる学生アルバイトが置かれた状況を全く鑑みないものであり、その意味でも不当極まりないものである。
首都圏青年ユニオン及び同顧問弁護団は、不当な雇止めと人間の尊厳を奪うことを容認した本判決を断固として糾弾し、労働者の権利を守るため、今後も徹底的にたたかい抜く決意である。


以上

 

弁護士ドットコム

「鮮度が落ちる」と雇い止めされた「カフェ女性店員」 不当と提訴するも認められず

2015年07月31日 19時42分


「鮮度が落ちる」と雇い止めされた「カフェ女性店員」 不当と提訴するも認められず
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「鮮度が落ちる」と雇い止めされた「カフェ女性店員」 不当と提訴するも認められず 会見の模様
全国展開する喫茶店チェーン「カフェ・ベローチェ」の千葉県の店舗で4年11カ月の間、アルバイトとして働いてきた30代の女性が「雇い止め」を受けたのは不当だとして、店舗の運営会社に雇い止めの撤回と慰謝料を求めていた裁判で、東京地裁は7月31日、請求を棄却する判決を下した。

判決後、東京・霞ヶ関の厚生労働省記者クラブで開かれた記者会見で、女性は「若くないからもういらない、という発言はひどいと(裁判所が)言ってくれると思っていた。今回の判決で、アルバイトは何の権利もなくて、人間としても保護する意味がないんだということを突きつけられた」と涙ながらに語った。

●「正社員との同一性」を否定
女性は、2008年7月から2013年6月まで、千葉市の店舗でアルバイトとして勤務していた。アルバイトの契約更新に制限はなく、3カ月ごとの更新を19回繰り返していたが、2012年3月、同社から突然、契約更新の回数を上限15回として、通算4年の勤務で契約を満了するという通達を受けた。

通達に納得できなかった女性は労働組合・首都圏青年ユニオンに加入し、「なぜ辞めなければならないのか」「ここで働き続けたい」と同社に主張し続けたが、納得できる理由が示されないまま、2013年6月に雇い止めになった。

弁護団は、女性が「時間帯責任者」として正社員の店長と同様の業務を行う中核的な役割を担ってきたことなどをあげ、「正社員の解雇と同一視すべきだ」と主張してきた。しかし、東京地裁の吉田光寿裁判官は、女性が店長の指揮命令下で「時間帯責任者」としての職責を長期間果たしてきた事実を認めたものの、正社員との同一性までは認めなかった。

●人事部長の「人格を傷つける意図」を認めず
また女性は、雇い止めとなる前の2013年1月、同社と組合の交渉の場で、人事部長に「従業員は定期的に入れ替わって若返ったほうがいい」「うちの会社ではこれを『鮮度』と呼んでいる」などと言われ、人格を傷つけられたとして、200万円の慰謝料を請求していた。

しかし東京地裁は、人事部長が「鮮度」に関する発言をしたことは認定しつつ、「原告の人格を傷つける意図があったことを認めるに足りる証拠がない」として、不法行為責任を否定し、慰謝料請求を認めなかった。

代理人の笹山尚人弁護士は「極めて不当な、多数の誤りを含む判決だ」と厳しく批判し、「控訴して、戦っていきたい」と話した。

女性は「裁判所は、正しいことを企業に対して言ってくれると思っていたが、そうではないと分かって、すごく落胆している。『鮮度が落ちた』という言葉には、納得いかない。言ったことは認めているのに、それが悪いと認めないのはおかしいと思っているので、できるだけのことをやりたい」と語った。

(弁護士ドットコムニュース)

 

第19回目期日 判決言渡し
日時:7月31日(金)午後1時30分〜カフェ・ベローチェ4年雇い止め事件@東京地裁519号法廷

 

第18回目期日
日時:5月25日(月)午後1時30〜カフェ・ベローチェ4年雇い止め事件 和解期日@東京地裁13階民事19部

 

第17回目期日
日時:4月20日(月)午後4時30〜カフェ・ベローチェ4年雇い止め事件 和解期日@東京地裁13階民事19部
※和解期日のため、法廷ではありません。終了後、場所を変えて報告集会を行います。

 

第16回目期日

期日:2015年3月20日(金)午前10時〜

法廷:東京地裁519号法廷 結審

 

第15回目期日
日時:2015年1月19日(月)午前10時〜カフェ・ベローチェ4年雇い止め事件 
和解期日@東京地裁13階民事36部

※和解期日のため、法廷ではありません。終了後、場所を変えて報告集会を行います。

週刊東洋経済 2014年5月24日号
雇用がゆがむ [非正社員] 法改正で雇い止め 遠い正社員登用」にカフェ・ベローチェの実態が掲載されました。

AERA

2014年2月10日号

 

社会
農薬混入事件で分かった
「非正規」の深い恨み
退職金、手当廃止、年60万減収/派遣法改正の地獄

 

アクリフーズ農薬混入事件を取り上げていますが、カフェ・ベローチェで行われている改正労働契約法逸脱運用についても触れています。

 

意 見 陳 述 書

2013年9月20日

 

1. 私は2003年にカフェベローチェ千葉店のオープニングスタッフとして働き始めました。賃金は時給840円と安かったですが、翌2004年からは、時間帯責任者として、店長とほとんど同じ仕事を任されるようになりました。それ以来、営業中の売上管理やシフトの管理、後輩従業員の教育、在庫と発注数のチェック、クレーム対応、鍵管理など責任の重い仕事をこなしてきました。

店長は1年〜2年で次々と異動してゆくため、新たに異動してきた店長はお店の状況を詳しくは知りません。そんな店長に、お店の経緯やスタッフの状況を教えるのは、私を含めたベテランのスタッフです。日々の業務にあっても、現場を管理し、お店を支えてきたのは、私を含めたベテランのスタッフです。

私は、グランドオープンから支えてきたこのお店をより良いものにしていきたい、たくさんあるカフェのなかで一番居心地がいいとお客さんに思ってもらいたいと、常に緊張感を持って一生懸命働いてきました。常連のお客さんが増えたときの喜びは言葉では言い表せません。そんな気持ちで働いてきたからこそ、ここで頑張ることにやりがいを感じ、このお店に愛着を持ち続けることができました。この想いは他のベテランスタッフも同じだと思います。

 

2. 2012年3月、事務所で店長から突然、「来年の3月で更新できなくなるみたいです」と告げられ、私が「それってクビにするという意味ですか?」と聞き返したところ、「そういうことになるみたいです」と、全くの他人事のように返答されました。

  私は、3ヶ月更新の契約を30回以上重ね、9年近くものあいだ、お店を支えてきました。そんなスタッフを、他人事のように、何の説明もなく辞めさせる会社だったのかと思い、悔しさがこみ上げてきました。そのため、私は労働組合に加入し、雇い止めの話をされた日から1年3カ月のあいだずっと、「なぜ辞めなければならないのでしょうか」、「ここで働き続けたい」と、会社に対し訴えてきました。

  ところが、団体交渉で会社側の述べる理由は二転三転し、全く一貫性がありませんでした。ある時は、「大学生は4年で就職するから」と言われ、ある時は、「アルバイトが契約社員より長く働けるのはおかしいから」と言われました。また、「店長より年上のアルバイトは使いにくいから」と説明されたときもありました。私が納得できる理由は、一度として示されることがありませんでした。

 

3. これまでの会社とのやりとりで深く傷つけられた事は、数えきれませんが、なかでも私に裁判を決意させた大きな出来事が二つありました。

  ひとつは、会社の不誠実な裏切りです。2013年2月末までの交渉で、会社は一度、私を含め一緒に交渉を行ってきた3人のスタッフに対し、これまでどおり、更新回数に上限を定めない契約を行うと、約束をしました。私はこの回答が出た日、泣いて喜びました。ところが、その回答から10日後、交渉の窓口であった総務部長は、急に、「和解協定書は結べない。社長にダメだと言われたから」と、この約束を一方的に破棄したのです。総務部長を、会社の代表と信用していたからこそ、何度も何度も話し合いを行ってきたのに、この一言で、それまでの一つひとつの話し合いがなかったものにされてしまいました。私は、怒りを感じると同時に、自分自身の立場の弱さに悲しみ、苦しみました。

  いまひとつは、雇い止めの理由のひとつとして会社が放った、“鮮度”という言葉です。鮮度という言葉はモノに対して使う言葉ですが、若い女性のことを、“鮮度が高い”と言い、そういう子をそろえた方が男性客の集客につながると、平然と言ったのです。愛着を持ち、8年以上働いてきた大切なお店に、魚や野菜のように、“鮮度が落ちたから”“賞味期限切れ”だから、もういらないと言われたことに、打ちのめされ、深く傷つきました。4年で人を使い捨てにするだけではなく、女性をモノ扱いし、年齢を重ねた女は、必要ないと言われたことが、私に裁判を決意させる決め手となりました。

約束を反故にされたこと、“鮮度”という言葉。私が声をあげるには、もう十分でした。

 

4. 雇い止めされてしまった6月15日以降、生活の糧を得ていた職場、約9年間私の生活と深く結びついていた職場を失った喪失感が、募っています。そして、女性として、人間としての価値も否定されたことは、どうしても許すことができません。

どうか正当な、公正な判決をお願いします。

 

以 上

  
 ベローチェ「4年雇い止め」事件の期日が決まりました。
第1回目期日
日時:9月20日(金)午後1時30分より
法廷:東京地裁519号法廷 (最寄り駅:地下鉄霞ヶ関駅)
※傍聴希望者は直接法廷までお越しください。
法廷終了後、場所を変えて報告集会を行います。
   
【2013年7月23日の記者会見で話した首都圏青年ユニオン組合員の発言】 
  私は、時給840円というとても安い賃金で働くアルバイトでした。2003年にオープニングスタッフとして働き始めましたが、2004年からは店長とほとんど同じ仕事をする責任者を任されるようになりました。店長が1年〜2年で次々と換わるカフェ・ベローチェで、お店を支えてきたのは、お店への愛着とこだわりを持つスタッフでした。

 2012年3月、事務所で店長から突然、「来年の3月で更新できなくなるみたいです」と告げられ、私が「それってクビにするという意味ですか?」と聞き返したところ、「そういうことになるみたいです」と、全くの他人事のように、返答されました。
 役に立ってきたはずの、いなければお店の営業に支障のあるスタッフを、何の説明もなく雇い止めにするような会社だとは思いもせず、3カ月更新の契約を30回以上重ねて、一生懸命働いてきました。そして、雇い止めの話をされた日から1年3カ月のあいだずっと、「なぜ辞めなければならないのか」という理由を問い続け、「働き続けたい」と、会社に対し訴えてきました。

 これまでの会社とのやりとりで深く傷つけられた事は、数えきれませんが、なかでも私に裁判という選択を余儀なくさせた出来事が二つありました。

 ひとつは、会社の不誠実な裏切りです。2013年2月末までの交渉で、会社は一度、私を含め一緒に交渉を行ってきた複数のスタッフに対し、これまでどおり、更新回数に上限を定めない契約を行うと、約束をしました。私はこの回答が出た日、泣いて喜びました。ところが、その回答から10日後、交渉の窓口であった総務部長は、急に、「和解協定書は結べない。社長にダメだと言われたから」と、この約束を一方的に破棄したのです。総務部長を、会社の代表と信用して交渉をしてきたのに、それまでの一つひとつの話し合いが踏みにじられ、なかったものにされてしまったことに怒りを感じ、自分自身の立場の弱さへの悲しみに苦しめられました。

 いまひとつは、雇い止めの理由のひとつとして会社が放った、“鮮度”という言葉です。鮮度という言葉はモノに対して使う言葉ですが、若い女性のことを、“鮮度が高い”と言い、そういう子をそろえた方が男性客の集客につながると、平然と言ったのです。愛着を持ち、8年以上働いてきた大切なお店に、魚や野菜のように、“鮮度が落ちたから”“賞味期限切れ”だから、もういらないと言われたことに、打ちのめされ、深く傷つきました。ただ4年で人を使い捨てにするだけではなく、女性をモノ扱いし、年齢を重ねた女は、必要ないと言われたことが、私に裁判を決意させる決め手となりました。

 約束を反故にされたこと、“鮮度”という言葉。私が声をあげるには、もう十分でした。生活の糧を得ていた職場を奪われただけでなく、人間としての価値も否定されたことが、どうしても許せなかったのです。


3ヶ月の有期労働契約、15回更新上限を導入し48ヶ月(4年で雇い止め) 
 2013年4月より労働契約法が改正され、同18条には「有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、労働者の申し込みにより期間の定めのない労働契約に転換しなければならない」としているが、ベローチェではこの5年目を迎えさせない制度改定を行なっている。
 「労働契約法の改正は、働く人が安心して働き続けられることができる社会を実現するためのものです」(厚生労働省:労働契約法改正のあらまし http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/pamphlet.html )とあるが、ベローチェの対応は、同法の趣旨を踏みにじり、法を逆手に取って労働者の雇用を不安定にしようというものである。
  
労働者の尊厳を侮蔑した雇い止めを許さない
 カフェ・ベローチェで働く多くのパート労働者は女性である。
 ベローチェは、首都圏青年ユニオンとの団体交渉で、「店長よりアルバイトの方が経験豊富になると、店長の統率がとりにくくなること」、「労働基準監督官から有期雇用契約であれば、契約書上に最大更新期間を設けなさい、それを明示しなさいと指導を受けたこと」、「大学在籍中の4年間に限って働くのが一般的であること」などと述べた。
 ほかにも、「定期的に従業員が入れ替わって若返った方がいい」、ベローチェではこれを「鮮度」と呼んでおり、従業員が入れ替わらないとその店の新鮮度が落ちると考えていることを理由として述べた。
 労働者は入れ替わって「鮮度」を維持したいに至っては、平等の法理念からして絶対に許されない理由である。こうした労働者の尊厳を侮蔑する企業のあり方も、一つの「ブラック企業」の姿である。こうした企業のあり方を許してはならない。



ベローチェの雇い止め不当と提訴 元女性アルバイト
http://www.47news.jp/CN/201307/CN2013072301002166.html

全国チェーンの喫茶店、カフェ・ベローチェで計約8年半アルバイトをしてきた千葉市の女性(29)が23日、契約の打ち切り(雇い止め)は不当だとして、運営会社のシャノアールを相手に、雇用継続の確認と200万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴。
同社の担当者は「内容が分からずコメントできない」としている。

訴状によると、女性は03年9月から千葉市の店でアルバイトとして勤務。一時期離職したが、3か月ごとの更新を30回以上、繰り返した。同社は12年3月に「契約更新は15回が上限、通算4年の勤務で契約満了」とのルールをアルバイトに通知。ことし6月に雇い止めになったとしている。

2013/07/23 19:36 【共同通信】 
 
ベローチェ:雇い止め女性提訴 「鮮度が落ちる」と言われ
http://mainichi.jp/select/news/20130724k0000m040086000c.html
毎日新聞 2013年07月23日 22時10分

喫茶店チェーンの「カフェ・ベローチェ」を雇い止めになった有期雇用の女性(29)が23日、従業員としての地位確認を求めて東京地裁に提訴した。会社側から「従業員が入れ替わらないと店の新鮮度が落ちる」と言われたとして、損害賠償など227万円の支払いも請求した。

訴状などによると、女性は2008年7月以降、千葉市の店舗で計4年11カ月勤務。3カ月ごとに契約を更新していたが、12年3月に会社から契約更新の上限を15回にすると通達があり、13年6月に雇い止めを通告された。

正社員とほぼ同じ業務をこなし、契約更新も機械的・形式的なものだったとして、代理人の笹山尚人弁護士は「正社員の解雇と同一視すべきで、合理的な理由のない雇い止めは無効」と主張している。

また、女性が加入する首都圏青年ユニオンとの折衝で、会社側は「定期的に従業員が入れ替わって若返った方がよい。これを『鮮度』と呼んでいて、従業員が入れ替わらないとその店の新鮮度が落ちる」と発言したという。女性は「野菜や魚のように『鮮度』と言われ、賞味期限切れのような言い方は許せない。生活の糧と同時に人としての価値も奪われた」と話している。

ベローチェを運営するシャノアールは「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。【東海林智】
 
「雇い止め不当」運営会社を提訴 「ベローチェ」元従業員
http://digital.asahi.com/articles/TKY201307230678.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201307230678
朝日新聞 2013年7月24日


コーヒーチェーン「カフェ・ベローチェ」で3カ月契約を何度も繰り返してアルバイトしていた女性(29)が23日、契約更新を不当に打ち切られたとして、運営するシャノアール(本社・東京都豊島区)に対し、雇い止め撤回を求める訴訟を東京地裁に起こした。人格を傷つけられたとして損害賠償も請求した。

訴状によると、女性は2003年から4年間、08年から5年間、千葉店でそれぞれ3カ月契約を更新して働いてきた。しかし今年6月に明確な理由を示されずに更新を拒否された。

4月に改正された労働契約法で、有期契約を繰り返して5年を超える場合、働き手が希望すれば、無期契約になれる。シャノアールの雇い止めは、無期契約への転換を避けるためで違法だと主張している。

訴訟について、シャノアールは「担当者が不在で答えられない」としている。
 
しんぶん赤旗 2013年7月24日
雇い止めの撤回を カフェ・ベローチェ 従業員が提訴
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-24/2013072404_01_1.html

シャノアールが全国で展開している喫茶店、カフェ・ベローチェ(以下ベローチェ)で、契約更新回数の上限制度導入を理由にアルバイト従業員が雇い止めされた問題で、従業員が23日、雇い止め撤回と未払い賃金、損害賠償金の支払いを求めて、東京地裁に提訴しました。

訴えたのは、千葉市内の店舗で働いていた29歳の女性(首都圏青年ユニオン組合員)です。

原告は2003年〜07年と08年〜13年6月にアルバイトとして働いてきました。ベローチェでは、アルバイトでも3カ月契約で更新が繰り返されてきましたが、昨年3月、契約更新回数を上限15回までとする労働契約を提案。昨年6月から実施されました。

原告は、08年からの契約更新が19回を超えていたため、雇い止めされました。

改定された労働契約法によれば、有期雇用契約が通算5年を超えて反復更新された場合、無期雇用契約に転換できます。笹山尚人弁護士は記者会見で、労働契約法の脱法を意図するものではないかと指摘しました。

原告は「大好きなお店だから働き続けてきました。それなのに、辞めさせる理由として『鮮度』という言葉を使って、長く働いて新鮮さがなくなったからもう必要ないんだと、人としての価値まで奪われるような発言までされました。一生懸命働いているスタッフをそういう目で見ているんだ、ということを外の人たちにも知ってもらいたいという思いもあり、提訴しました」と話しました。 





PDF版


改正労働契約法の負の側面に目を向けよう
広がる「パート社員5年使い捨て」とどう闘うか

シャノアール・ベローチェなど有期雇用の契約回数上限の導入計画に対して、
労働運動・社会運動は撤回のために全力でたたかおう。


1、改正労働契約法はやはり問題
改正労働契約法は、改正前の法案の時から運動内部でその評価が分かれていた。今回の改正の負の側面として私たちが危惧しているのは次のことだ。
有期雇用を繰り返し更新して5年を経過したときに、労働者が使用者に申し出れば期間の定めのない雇用に転換しなければならないという新しい規制が入ることが、使用者側が期間の定めのない雇用にはしたくないがために5年を前にして有期雇用を切るのではないかということだ。
まさしく、カフェ・ベローチェを経営するシャノアールが5000人以上のパート・アルバイト・契約社員に導入しようとしている「4年上限」規定がそれにあたる。他の企業や学校でも、導入が検討されていると耳に入っている。私たちの知らないところで大量に有期雇用が拡大するおそれがあるのが今回の法改正である。


具体的に考えてみよう。たとえば、大学や高校の非常勤講師のケースだ。その多くは1年ごとの有期雇用の契約更新だ。カリキュラムが変わったり、学生・生徒数が変動すれば契約更新がなされないのがこれまでのあり方だった。今回の法改正でどうなるか?5年を超えたら期間の定めのない雇用に大学や高校がするだろうか?常識的に言って、まったくありえない。間違いなく契約更新の上限を導入するだろう。これによって、それまで長く同じ学校で非常勤講師をしていた人は、5年ごとに漂流することになるだろう。
しかも、次の非常勤講師の職を切れるときにスムーズに見つけることなど至難だ。このように、具体的に考えれば考えるほど、今回の法改正には問題が多すぎる。1000万人以上の有期雇用労働者全体に関わる大問題だ。再度の法改正が必要なのは明らかだ。


2、今回の改正に賛成であっても、有期雇用の拡大には警戒して反対すべき
今回の法改正に対して厳しい評価をしないにしても、実際に今回の法改正を契機にして有期雇用の5年上限などを入れている企業を労働運動全体として徹底して批判することは必要だろう。
そもそも、労働運動の側が有期雇用規制を求めているわけで、もし、今回の法改正の評価を理由にして、有期雇用の年限を縮めようとしている企業を批判しないなどということがもしあるならば、それは転倒している。
また、それらを個別のケースとして軽視するわけにもいかない。個別のケースが広がることがさらに細切れの有期雇用を拡大させていくことにつながるわけで、有期雇用の契約回数の上限を入れた企業に対して社会的批判を集中させることで歯止めにしていく必要がある。そうした運動をつくらなれば、だれにも知らないうちに有期雇用は拡大していくだろう。


3、労働組合のない企業、労働組合の弱い職場で先行して導入される危険性
また、職場の労組の力でそのような導入を阻止しようという主張は、残念ながら実態に合わないことも指摘しておきたい。当然のことながら、労組のない企業があふれているわけであるから、そこで先行して有期雇用の契約回数制限は導入されるだろう。
「そういっても、ベローチェ以外の事例は聞いたことがないから、もう少し様子をみてからでないと判断がつかない」などという意見も散見されるが、こうした考えはきわめて有害である。
労組のない職場で先行して起こっていれば、連合にも全労連にも全労協にも日本労働弁護団にも自由法曹団にも情報が入らないままに、ひたひたと有期雇用が拡大していることも十分にありうるのだ。


4、すべての労働運動・社会運動が全力をあげて有期雇用の契約更新回数の上限を導入する企業に対してたたかおう
「今回の法改正には積極面もあるから活用できるところを活用すべき」と主張するのはかまわない。それはおおいに活用すればよい。法改正があったときに、それがいかに不十分な規定であったとしても活用する方法を考えてたたかうというのは、あたりまえのことであって、だれも反対しないことである。
問題は、法改正後にそれとかかわって不当なことが起ころうとしているときに、「積極面があるのだから」と言って、あたかも負の側面がないかのように議論しようとすることである。
有期雇用の拡大を希望している労働運動関係者というのは、私の知る限り一人もいない。有期雇用の更新回数の上限導入が拡大することを期待している労働運動関係者、労働者も一人もいないだろう。
であるならば、いま、起きている一つ一つの有期雇用の更新回数の上限導入に徹底してたたかうことが重要ではないのか?労働組合や労働関係の弁護士は、労働組合のない職場の有期雇用労働者にそういったことが起こっていないかアンテナを張って、その撤回のためにたたかうべきではないのだろうか。
すべての労働運動、社会運動に訴えたい。いま、起きていることは、1000万人以上の有期雇用労働者全体に関わる大問題である。細切れの有期雇用が拡大されていくのを傍観するのか、徹底してたたかうのかの岐路にある。個別の企業へのたたかいが有期雇用労働者全体の生活を守ることにつながっている。有期雇用の上限回数を導入する企業へのたたかいに全力をあげよう。

首都圏青年ユニオンニュースレター 第138号より
【河添 誠(首都圏青年ユニオン書記長)】 (当時)


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