かつ丼・とんかつチェーン「かつや」で働くアルバイトがコロナ禍に不当な休業・シフトカットを受けた問題で、その補償およびシフト回復をめぐって飲食店ユニオンと争っていた事件について、労働審判にて勝利的審判を勝ち取ることができました。
●報復的なシフトカット
昨年4月の緊急事態宣言中に、新型コロナウイルス感染者疑いの社員を店舗に出社させていたことについて、アルバイトが身の危険を感じ、出社拒否(ボイコット)を行ったところ、ボイコットに対する報復的措置として、休業を強いられた他、シフトが大幅に削減された問題がありました。
その後、アルバイトらが飲食店ユニオンに加入し、休業補償とシフト回復を求め団体交渉を行ってきましたが、会社はあくまでシフトカットは正当だと主張してきました。その後、交渉を続ける中で組合員2名については一定のシフト回復を勝ち取りましたが、1名については大幅なシフトカットが続いていたため、シフト回復を求め労働審判を申し立てました。
コロナ不安で出勤拒否の「かつや」店員、労働審判申立て「報復としてシフトカットされた」https://www.bengo4.com/c_5/n_13385/
●労働審判で乱暴なシフトカットに金銭支払い命令
労働審判では、3回の期日を経て、11月29日に審判が出ました。審判の内容は、以下のとおりです。
1 申立人と相手方は、申立人の月間実労働時間を170時間とすることを目指して双方努力し、誠実に協議することを相互に確認する。
2 相手方は、申立人に対し、本件解決金として〇〇万円の支払い義務があることを認め、これを本労働審判確定後2週間以内に支払う。
休業補償については、休業支援金給付金が活用できたこともあり、ユニオンとしてはシフト回復が大きな目標でした。その点では、「月間実労働時間を月170時間とすること」の努力が命じたらたことは大きな成果です。シフト制労働であっても、実績にもとづいた労働時間の保障が一定、義務付けられたものであると評価できます。また、会社側に対して20万円の解決金支払いが命じられている点も画期的です。乱暴なシフトカットに対して、アルバイト従業員への慰謝料としての意味合いがあると評価でき、一方的なシフトカットという会社の行為が断罪されたと考えています。
●シフト制労働の歯止めとなる画期的審判
コロナ禍で多くのシフト制労働者が休業やシフトカットによる収入低下の被害を受け、社会問題化しています。また、休業補償を求めるシフト制労働者に対して、さらなるシフトカットやシフトに入れないなど、シフト制を悪用した仕打ちも起きています。一方で、シフトを強要する問題もあります。
このように、シフト制を濫用し、都合よく労働時間が調整されているシフト制労働の実情を考えると、労働時間の保障の努力義務や乱暴なシフトカットへの慰謝料支払い命令という労働審判の結果は、シフト制労働の悪用・濫用への歯止めとなる画期的なものであり、社会的意義が大きいでしょう。
シフトカットに対して泣き寝入りせず、粘り強くたたかい今回の全面的な勝利を獲得したみなさんにたいへん励まされます。全国の同様のたたかいにとって大きな前進です。おめでとうございます。弁護士中村和雄