資本金994億円を誇る阪急阪神ホールディングスのグループ企業である「株式会社阪急阪神ホテルズ」(資本金10億円)で、非正規労働者の差別的な雇止めが発生しています。首都圏青年ユニオンは、非正規労働者の雇用と生活を守るため雇止めの撤回を求め、2021年3月、株式会社阪急阪神ホテルズ並びに阪急阪神ホールディングス株式会社に、団体交渉を申し入れました。
◆正社員は守るが、非正規労働者は雇止め。差別的な非正規雇止めをやめろ
Aさんは、阪急阪神ホテルズが運営するホテルのナイトマネージャーとして3か月の契約を繰り返し更新し、2年間働いてきました。17時から翌朝9時まで、チェックイン・チェックアウトの対応や、宿泊客の対応、夜間の巡回などを行っている。
新型コロナウイルス禍においてAさんが勤めるホテルは、2020年3月以降休業となり、Aさんも休業状態となっていました。その間は会社から休業手当を受け取っていました。その後2020年12月24日に、契約更新のため人事部社員との面談に行くと、そこで提示された雇用契約書では、契約期間について「2021年1月1日から2021年3月31日までとし、以降は更新しない」という文言が挿入されていました。会社からすれば、雇止めすることの予告を契約書上に挿入することで、「労働者も雇止めに合意している」と主張しやすくなります。しかし、この契約更新の条件を受け入れないで契約更新をするという選択肢は提示されず、Aさんはやむなくサインしました。実質的には、雇止めを予告した契約書への「合意」を強制されたといえるでしょう。
2020年12月24日時点では、大企業への雇用調整助成金の助成率は75%でしたし、休業支援金を大企業労働者が使うことができず、またこうした新型コロナ禍における緊急措置は2021年2月28日で終了することになっていました。しかし2021年に入ると、大企業への雇用調整助成金の助成率が100%に引き上げられ、休業支援金の大企業労働者による利用も可能になり、またこれら緊急措置が2021年4月末にまで延長されました。企業による労働者の雇用維持を支援する制度が拡充されていたのです。Aさんはこうした情勢を見て、「まさか雇止めを本当にすることはないだろう」と思っていたといいます。
しかし2021年2月19日、Aさんの手元に、「雇用契約終了の予告通知」が届きます。そこでは、「更新しないことが合意されているため」として、2021年3月31日での雇止めが通告されていました。その後2021年3月11日に呼び出され、退職に関する書面へのサインを求められましたが、Aさんは雇止めは受け入れられないとして拒否しました。同時に、「ほかの非正規労働者にも同じような扱いをしているのか」「正社員も解雇しているのか」とAさんが聞くと、そこに来ていた人事部の社員は「ほかの非正規労働者もAさんと同じようにきっています」「正社員の雇用は何とか守っています」と話しました。正社員を雇用維持しながら非正規労働者を切り捨てていることを、平然と明らかにしたのです。
◆阪急阪神ホテルズは非正規労働者を切り捨てるな!
新型コロナウイルス禍では、雇用調整助成金の特例の実施や休業支援金制度の創設など、様々な形で企業が労働者を雇用し続けることの支援策が講じられています。2021年1月には、さらに、大企業についての雇用調整助成金の助成率が100%に引き上げられ、またそれまでは中小企業労働者しか使えなかった休業支援金を大企業労働者も使えるようになりました。休業支援金は、新型コロナウイルス禍でシフト・労働時間が減っている労働者が、企業から休業手当をもらえない場合に、国に直接申請することで国から直接もらえる給付金であり、すなわち、企業が財政負担をせずに、労働者の雇用を維持することができるのです。
こうした情勢にもかかわらず非正規労働者を雇止めしようとしている阪急阪神ホテルズは、新型コロナウイルス禍における大企業の社会的責任を放棄しているといえるでしょう。阪急阪神ホテルズには、雇止めを撤回し、非正規労働者の雇用と生活を守ることを強く求めていきたいと思います。
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