2020年12月22日に、雇用保険に関する厚労省要請を行いました。完全失業者数は10ヵ月連続で増加して195万人に達しました(労働力調査)。また、ハローワークの聞き取り調査によれば、新型コロナの影響で解雇・雇い止めにあった人数(見込みを含む)は79,522 人と8万人に迫っています。これまでコロナ禍における労働者救済の政策は雇用調整助成金や休業支援金といった休業補償政策が中心でしたが、失業者の増加に対応するためには、雇用保険制度の緊急的な拡充も必要であることから、本要請を行いました。
1.コロナ禍に多い離職理由を会社都合に
まず、新型コロナ禍において増加する退職事例の場合に、ハローワークの方で特定受給資格者と認定するよう求めました。特定受給資格者の範囲に該当する離職理由の場合には会社都合離職扱いとなり、待機期間なく失業手当(雇用保険制度の基本給付)を受けることができます。具体的な要請項目は以下です。
⑴ シフトカットに伴う賃金低下を理由とした離職の場合に、「特定受給資格者」に当てはまる離職理由として、「賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見しえなかった場合に限る)」(賃金低下要件と呼ぶ)が挙げられています。新型コロナウイルス禍では、緊急事態宣言もしくは売り上げの悪化により対人サービス業を中心に大幅なシフトカット・給与削減が生じ、そうした状況を受けて退職する労働者が数多く存在します。
しかし、シフト制労働者のシフトカットによる退職の場合、例え賃金が従前から85%未満に低下していたとしても、「シフト制労働者の場合には短期的なシフトカットは予想され、また短期的なシフトの回復の可能性も高いから」と、この要件に該当しないと判断されるケースがあります。
シフト制労働者とはいえその収入で生計を維持しているという労働者が増えており、また、新型コロナウイルス禍においては通常のシフト調整を超えるシフトカットが大規模にされていることから、シフト制労働者であろうとも、この「賃金低下要件」を広く適用するよう要請いたします。
⑵ 特定受給資格者に当てはまる離職理由として、「事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者」が挙げられています。新型コロナ禍では、売り上げの悪化に伴う事業所の閉鎖が様々に行われており、事業所の閉鎖に伴って離職する労働者も多数存在します。しかし、事業所の閉鎖に伴って他店舗での就業を勧められ、通勤困難であるとして異動を断り離職したケースについては、通勤困難な場所への異動指示を理由とした離職として、「特定理由離職者」と判断され、特定受給資格者とくらべると給付期間・給付額が抑制されてしまうケースがあります。
正社員であれば、労働者の側も広範囲の異動を前提にしている場合がありますが、非正規労働者の場合にはそのような異動を前提にしておらず、異動の要請に応えることはとりわけ困難です。したがって異動要請がされたかどうかにかかわらず、在籍職場が閉鎖した場合の離職については、特定受給資格者とするよう要請いたします。
2.シフト削減や店舗異動を理由とした離職は「会社都合」となる可能性も
厚労省は要請⑴に対して、賃金低下要件は所定労働時間の定めがある労働者を念頭に置いた要件であり、シフト労働者の場合は基本的に適用できないとしつつ、「②労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者」、休業手当が不払いの場合には、「⑫事業所の業務が法令に違反したため離職した者」として特定受給資格者と認定される可能性を示唆しました。なお、どの要件に当てはめられるかは、雇用契約書の労働時間部分の記載や勤務実態を考慮して事例ごとに判断されるとのことなので、ハローワークの窓口交渉によって会社都合となる余地があります。
⑵に対しては、「契約上勤務地が決まっているにもかかわらず、店舗異動を命じられ、そのことを理由に退職した場合には、特定受給資格者と判断できる」というでした。つまり、店舗閉鎖に伴う異動命令を理由に離職したにもかかわらず、会社が離職票に自己都合離職と記載した場合でも、ハローワークでの説明次第で会社都合となる可能性があるということです。
3.給付制限期間を取り払い、コロナ禍に適した雇用保険制度を
雇用保険制度には、そもそも離職理由によって給付水準に大きな差が生まれてしまうこと自体が、基本給付の利用を抑制する大きな欠陥といえます。そこで、離職理由による格差そのものをなくすことを要請しました。しかし、厚労省からは「保険料収入と支給のバランスをとるため、離職理由によって格差を設け“安易な退職者”への基本手当支給を制限することはあくまで必要である」と回答がありました。
このような厚労省の回答から、現行の雇用保険制度が、失業の実態即したものではないと言えます。とりわけコロナ禍においては、上記の通り自己都合とはいえない退職事例が多く、“安易な退職者”として給付を制限したのでは、失業時生活保障制度として機能を十分に果たしません。
首都圏青年ユニオンは今後も雇用保険給付に関する相談を受け付け、ハローワークの窓口交渉にも取り組んでいきます。また、今後も事例をもとに、繰り返し雇用保険制度の拡充を求める運動を行っていきます。
【首都圏青年ユニオンの相談先】
①電話相談ホットライン:03-5395-5359 火曜日・金曜日の17時~21時
②メール:seinen.union@gmail.com
③労働相談フォーム
(https://docs.google.com/forms/d/1ffnReUshrSj7RilqPIcvKrR7Go44jKxP5Lbdc9Lg8v8/viewform?edit_requested=true)
※退職経緯や離職票の記載内容、ハローワークの対応など詳細をお伝えください。
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